プロローグ:転移

 

俺は後藤龍之介。

俺はただ一介の普通の高校生だ。

特技と言えば小さい頃剣などを習っていた位である。

 

「ふあぁぁ…。」

俺は学校の帰路の途中だった。

人もほとんどいない、静かな住宅街。

向かいに、黒尽くめな服の男が歩いてくる。

 

俺は気にも留めていなかった。

 

しかし、その男とすれ違う瞬間、俺は意識が途切れた。

 

「ん…?」

俺がしぶしぶ身体を起こして、辺りを見回すと…。

「あら、起きたわね。」

「あんたは、いったい…?ここ何処だよ?俺をどうする気だ?!」

「とりあえず、一つづつ答えていくと…。」

「私の名前はフィリア=エル、ここは、とある地下室の部屋よ。」

「そして貴方は…。」

 

その答えに、俺は驚きを隠せない。

 

「貴方は、この世界を守る勇者…ってところ。」

「は?」

「だから…貴方はこの世界を守る勇者になってもらうのよ。」

「いや…だから。」

「何でだよ、ただ一介の高校生が何でそんなことしなきゃならないんだ?!」

「ましてや、何から守るんだよ!」

「こんなバカバカしい話し聞いてられるか!」

「帰る!ここから出してくれ!」

「無理よ。」

「何故?」

「貴方を地上に出すことは出来るけど…そこは貴方の知ってる世界じゃないわ。」

「?取りあえず出せよ。」

「いいわ、着いて来て。」

 

外に出た俺は唖然とした。

辺り一帯枯れ木が漂ってるただの平野だった。

 

「ど、何処だ?外国か?」

「…もうやめなさい、貴方は感じているのでしょう?ここが、自分の世界ではないと。」

「…。」

「とりあえず、部屋に戻りましょ、この世界のこと、話してあげるから。」

 

俺はさっきいた部屋に戻った。

 

「…率直に言うわ、ここは貴方から見た未来の世界よ。」

「はぁ?!馬鹿なこと言うな!それに一体いつだよ!」

「ここは22世紀の後期、本当なら貴方は、150歳以上よ。」

「…馬鹿な!そんなことが!俺を帰せよ!!」

「とりあえず、最後まで聞きなさい。」

「…分かった。」

「まず…貴方を連れてきた技術は、時間転移、つまりタイムワープしてきた訳ね。」

「この技術は、22世紀初期に発見された物…。」

「でもこれは不完全じゃないの、まだまだ、未開が多すぎて、実用化すらされていない。」

「俺が実験台か?」

「まぁ、それもあるかもね、緊急事態だったの仕方無いわ。」

「緊急?何かあるのか?」

「それは…。」

「この世界がとある生物に征服、いえ破壊されようとしている、って…信じる?」

「結論は最後まで聞いてからだ。」

「そうね、その生物は約50年前とある研究所で研究されていた…人間が戦争の道具として戦闘力をつけた生物。」

 

その名はオーディア

「その後オーディアは、当時の科学力では制御できない程の力を使い研究所を抜け出し、増殖能力で、自分の分身を造りだした。」

「貴方の時代で言うモンスターね。」

「そして、オーディア軍VS地球軍の形が出来たのね。」

「そして今、地球軍は戦力差で、押され始めた…。」

「それを挽回するため、貴方が召還されたの。」

「俺に何の力も無いぞ?」

「貴方の中に特別な力が眠っている、貴方は気付いてないだけ。」

「あの荒れた土地も戦場の跡。」

「これが今の世界状況。」

 

「大体は分かった。」

「要は、俺にそいつを倒せってことか?」

「大袈裟に言うとそんな物ね。」

 

「嫌。」

「俺はそんな物に関わる気はねぇ、元の時代に帰してくれ。」

「それは無理ねぇ。」

「はぁ?!その時間転移使えばいいだけだろ?!」

「言っておくけど、まだ、完全に解明できた訳じゃないわ。」

「同じ物体を再度移動させるには、時間をおかなきゃならないの。」

「…どの位?」

「えっと…約5年ね。」

「なんだとぉ!!!!!」

「帰れないなんて…。」

 

「それに、帰ったとしても、貴方日常の生活はものおくれないわ。」

「えっ?」

「時間転移の慈破で、あちらも貴方のことに気付いている…。」

「敵も貴方の時代にやってきて、貴方を…。」

「言っておくけど、時間転移の技術はあちらの方が上、知能もあちらの方が高いから。」

「自由に出来る。」

「…ってことは。」

「あちらなら、何とかなるかもね。」

「さぁ、どっちを取る?逃げ回って5年過ごすか、私達に協力して戦いに参加するか。」

「…。」

 

「分かったよ、どうせ帰れない、帰れても襲われるんだ、なら強くなって自分を守れるようにする。」

「そう…なら…。」

「ん?」

「ついてきて。」

 

一階に上がって小さな小屋に連れていった。

 

「じゃ、ここで…。」

 

ドゴォォォォォ!!!

「何だ?!」

「来たわね…!」

 

そう言い、フィリアは鋭い目つきに変えた。

 

一話へ。